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韓国除籍の翻訳を依頼する際の注意
韓国の除籍謄本(古い戸籍)はほとんどの帰化申請の際に必要な書類ですが、普段行くことのない韓国領事館で書類を請求してその翻訳もしなければならないとかなり大変な作業になります。
行政書士へ依頼せずにご自身で帰化申請される方もこの書類の取得と翻訳だけは依頼されることが多いのではないでしょうか。
この時、基本証明書等の新しい書類は問題ないのですが除籍謄本の請求・翻訳を依頼する場合には注意が必要です。(もちろん帰化申請の依頼に翻訳が含まれる場合も)
多くの事務所では韓国の戸籍の翻訳料を1枚あたり○○円と設定していると思いますが、これは枚数が多ければ当然金額は上がります。
しかし、帰化に必要な書類なので料金が高いからといって「大丈夫です」とは言えません。
ところがこの除籍謄本を必要以上に請求し、その翻訳料で報酬額をあげるような業者がいるようです。
これは韓国領事館で戸籍関係の書類を請求する際に、最近チェックが細かくなったなと思い聞いてみるとそのような業者がいるからだと教えていただきました。
基本料金は安かったのに、翻訳料が高くて結局高額になってしまった…などといったことがないようにご注意ください。
とはいえ本当に必要な分だけ請求しても枚数が多いこともあるので判断は難しいですが…
母が日本人でも日本国籍にならない場合
現在では、父母のどちらかが子の出生の時に日本人であればその子は日本国籍を取得できます。
しかし、とあるご依頼者様は母が日本人なのに外国籍である父の国籍になっている、という方がおられました。
しかも下のご兄弟は日本国籍でご依頼者様だけが日本国籍ではなかったのです。
これは現在の国籍法に改正があり、改正される前は父母ではなく「父」が子の出生時に日本国民であった場合のみ出生によって日本国籍を取得できるとされていたからです。
この改正法は昭和60年1月1日から施行されましたので、それ以前にお生まれは上記のようになるのです。
ただし、特例として昭和40年1月1日以降にお生まれの方は昭和63年1月1日までに届ければ日本国籍を取得できました。
子供の国籍はどうなるの?
日本人と外国人の間に生まれた子供の国籍はどうなるのか
国籍の決定に関する基準はその国によって異なりますので一概にはお伝え出来ませんが、当事務所のお客様は韓国の特別永住者の方がほとんどですので「日本国籍と韓国籍の方のお子様」の場合でお考え下さい。
日本と韓国は血統によって決まるため、「日本人と韓国人の両親」から「日本か韓国」で生まれていれば(場所によって決まる国もあるため出生地も重要です)両方の国籍を取得します。
しかしこの重国籍状態はいつまでも認められる訳ではなく、日本の場合は満22歳(令和4年4月1日以降は満20歳)までに国籍選択をしなければなりません。
ですがこれは法律上のお話で、実際は何もする必要がない場合もあります。
どのような場合かというとお子様が生まれた時、出生届を日本の役所に出しますがほとんどの方はそれで終わり、韓国にも届出をしていない方です。つまり韓国の戸籍上は子供が生まれてすらいないのです。そのような方は結婚も届出をしていないかと思います。ですがそのような状態の方は一定数おられます。
もし届出をして両国の戸籍に登録されている方で、日本国籍を選択する場合は韓国の領事館で国籍を離脱する届出が必要となります。
日本国籍を選択する届出を日本に提出しても、韓国とリンクしているわけではないので結局韓国籍の離脱が必要です。ご注意ください
官報の掲載が気になる方は
帰化の申請が許可されると官報に帰化前の氏名と生年月日、現在の住所が載せられるのですが、最近このようなお問い合わせがありました。
「私の名前は珍しいので官報に載れば帰化したことが知られてしまうのではないか」
「ずっと残るものなので特定されたりしないか」といったものでした。
そもそも官報とは政府や各府省が国民に広く知らせるために発表する公文や公告、会社法による法定公告等の記事が掲載されているもので簡単に言うと政府からのお知らせです。
特定の人に向けたものではないのでいつでも誰でも見られるようになっていて、インターネット版の官報ならスマホでも手軽に見ることができます。
知られたくない場合はどうすればいいのでしょうか
まず、官報に載せられる情報についてですが、確かに氏名・生年月日・住所が載せられますが氏名については帰化前のもので通称名ではありません。本国の名前です。
したがってそもそも国籍を隠しておられるなら名前だけでは分かりません。
それでも「住所と生年月日から推定される」とご心配でしたら、実際にインターネット官報をご覧になってみてください。
住所と生年月日と外国人の名前が順不同で(おそらく許可した順番なので都道府県や生年月日によって整理されて並んでいるわけではありません)ずらずらと並んでいて興味のない人には全部見る気にはならないものです。しかも官報に記載されるものは帰化以外にもたくさんあります。
つまり何が言いたいのかというと、探そうと思っても「許可された年月日、帰化前の氏名、生年月日及び申請時の住所」が分かっていないと探すのは非常に困難だということです。
ましてやたまたまご近所の方や知人が官報を見て帰化を知るような事はないと思われます。
それでも、どうしても個人情報が載ってしまうことが心配な場合は申請時に名前を変えたり、申請が許可された後に引っ越して住所を変えたりするなどの方法が考えられます。
ただし昔からの知り合いにはなぜ名前が変わったのかと思われるかもしれませんが…
(通常なら下の名前を変更するためには家庭裁判所で手続きしなければなりません)
結論としてはあまり気にされる必要はないかと思います。
前述の通り情報を得た上で特定する意思を持って探さないと分からない事ですので。
意外な落とし穴!?住居に関わる年数以外の要件
帰化申請をご依頼される方はよく調べてこられる方が多く、要件なども詳しく理解されていて「〇〇は大丈夫だから帰化できますよね?」と話がスムーズに進むこともあります。
しかし、よく調べて来られた方でも見落としがちなポイントがあります。
例えば…
- ①住民票を移していない
- ②誰かの家に同居している
お子様だけが進学等で下宿している場合、住民票を実家のままにしているケースがあります。
申請書類の中には「住民票」と「賃貸契約書」(持家の場合は登記)が必要になりますが、当然住民票の住所と実際の現住所が一致している必要がありますので①についてはこれが満たされないことになります。
ですが、これはすぐに直せることなので大きな問題にはなりません。
問題になるのは②のような場合で、例えば恋人の家に同棲しているがもともと相手が借りた部屋に一緒に住み始めたというような場合、部屋を借りた本人しか契約していない為理由もなしにその部屋に住んでいることになり、法令違反となってしまうため申請ができません。
もちろん家族以外の同居がダメというわけではなく、二人で部屋を借りて契約書に同居人として名前が載っていれば問題ありません。
同居者以外の家族や親族の持家に住んでいる場合はその持主である親族の方に、申請者に貸していることが分かるように一筆書いて頂ければ大丈夫です。
貸主に無断で住んでいることが問題となるわけです。
- 実際にあったケースでは…
恋人の家に同居しているが上記のように契約書には含まれていない。
そのため実家に戻って申請しようと思ったが、実家の家族の収入が低く(生計要件は同居者全ての収支と税証明から判断されます)要件を満たしていないため一人で部屋を借りなければならず申請に時間と余計な引っ越し費用がかかった。というもの
住民票は移していてもこのような状態のままでは申請できませんのでご注意ください。
帰化申請の手順について②
前回の続きで申請に必要な書類のご説明をいたします。
ここでは基本的に必要な書類をピックアップして記載しますが個々の状況によっては異なることもありますのでご注意ください。
例)韓国籍の特別永住者の方、独身で一人暮らし、会社員、両親健在、兄弟なし、
- 帰化許可申請書(作)
- 親族の概要を記載した書面(作)
- 履歴書(作)
- 韓国の戸籍
- 上記の翻訳(作)
- 住民票
- 生計の概要を記載した書面(作)
- 給与明細・源泉徴収票
- 市民税の納税証明書、課税証明書
- 運転記録証明書 ※免許有の場合
- 賃貸契約書のコピー ※賃貸の場合
- 居宅、勤務先付近の略図(作)
(作)は自身で作成
状況によって条件や必要書類が変わるためザックリと書きましたが、いかがでしたでしょうか?
実はこのケースは最もシンプルなケースだと思います。
親族の人数や存命か否か、帰化した人はいるかどうか、自営業の方であったり会社の役員であったりと例を挙げればキリがないですがそうなれば必要書類はもっと増えるでしょう。
しかもこの最もシンプルなケースでも100枚前後の書類になります。
中でも大変なのが、韓国の戸籍を必要な分請求し翻訳する事ではないでしょうか。
韓国の戸籍といっても日本のものと違い、数十枚に及ぶこともあります。
韓国の戸籍の取り寄せと翻訳だけ依頼する方も見られますが、多くの場合取り寄せだけだと1枚につきいくらという料金設定になっているところが多く、他の書類収集・作成にも多大な労力を要するので結局全部依頼した方がいいといった事になると思われます。費用を抑えるつもりでも枚数によってはあまり効果がないという事にもなりかねません。(厄介なことに取り寄せてみないと何枚になるかわかりません)
行政書士の仕事はほとんどこの書類収集と作成となっております。
当事務所では書類収集と作成だけを行政書士が行い、申請の予約や提出はご自身でされるプランもあり、費用を抑えたい方はそちらを考えてみてはいかがでしょうか。
帰化申請の手順について①
緊急事態宣言が解除され、法務局の帰化申請も再開していますが大阪法務局本局は以前のように予約なしでは相談もできず予約枠もすぐに埋まってしまう状態になりました。
帰化申請について何も知らない方は法局へ何回も通って書類収集や作成をされますがそれが非常に難しくなったということです。
今回は帰化申請の手順についてお話いたしますので、ご自身で申請される方や(当事務所に限らず)行政書士に依頼しようと思っておられる方は是非ご参考になさってください。
1、申請はまず法務局へ相談に行きます。
そこで実際に申請を受け付ける職員の方が「あなたには〇〇が必要ですよ」と必要な書類や、書類の作成方法も手引きを使って説明して下さります。
2、そして何度か法務局へ足を運び、訂正や指摘等を頂きながら書類を完成させます。
申請ができたとして、そこからしばらくは待つだけになります。
3、この間は書類が法務局内で審査され、次に法務省へと送られそこでも審査されます。
途中で追加の必要書類の提出を求められることもあります。
4、そしてすべて問題なければ許可が下りる、という流れです。
ザックリと書きましたがこのような感じですね。
ただ、さらっと書いた書類の収集と作成が一番大変で時間がかかる作業です。
次回はその大変な必要書類についてお話します。
読んでいて「なんだ、簡単そうだな」と思った方は次回の書類についての記事を見てから改めてご判断ください。
きっと意見が変わると思います!
帰化が「許可」であることの意味とは
今回は帰化制度自体についてのお話です。
「帰化」については国籍法第4条以降にその規定があり、4条2項には次のように規定されています。
「帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。」
そしてその基準は法務大臣の裁量によります。(要件は法定されていますが、その要件を満たした者を許可するかどうかは法務大臣が決めるということです)
このことは法務省のHPにも記載があります。
「また,これらの条件を満たしていたとしても,必ず帰化が許可されるとは限りません。」
(法務省HP 国籍Q&Aより 2020年5月時点)
なぜ要件を満たしても必ずしも許可されないのかというと、帰化とは「許可」という行政行為だからです。
法務大臣が帰化してもよいと認めた時にだけ効果が与えられます。
また、不許可となってもその理由を告知する義務はありません。
帰化は「積極的に進めていこう」というものではないのでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、2020年4月7日に緊急事態宣言が発令され、多くの企業や個人事業者に対し休業要請が出されましたが法務局は緊急事態宣言中であっても一部を除いては業務を続けていました。
緊急事態であっても法律で決まっている権利義務や期限などが関係するため業務を停止できなかったのでしょう。
しかし、緊急事態宣言中法務局で停止していた業務があります。
それが帰化の受付・相談です。
帰化はしなければならない事ではないので優先順位が後回しになってしまったようです。
以前の記事でも触れましたが、日本という国は外国人に優しい国ではないように感じます。
国籍関係の業務を専門としている身としては、このように外国人の権利について二の次とされている現状を残念に思います。
外国人の公務員は出世できないってホント?
「公務員は日本国籍じゃないと昇進できない」 こんな話を聞いたことはありませんか?実際はどうなのかお話いたします。
結論から申しますと、日本国籍でない方は地方公務員の管理職になることは難しいといえます。(国家公務員については受験自体出来ないことは前回お話致しましたね) これは「東京都管理職選考試験事件」(平成17年1月26日最判)という事件の最高裁判決によって明示されました。
この事件は東京都に採用されていた在日韓国人2世であるXさんが課長級の管理職になるための選考試験を受験しようとしたところ、日本国籍でないことを理由に受験を拒否されたという事件です。
そして判決では、地方公務員の管理職は公権力を行使する職務を行うため、「原則として日本国籍を有するものが公権力行使等地方公務員に就任することが想定されている」「外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではない」とし、日本国籍でない事を理由に管理職の選考を拒否しても違法ではないことを判示しました。
この判決には反対もあり、今後はどうなるか分かりませんが現状では外国籍で管理職に就くことは難しいということです。
まとめ
この事件だけでも日本は外国人にはやさしくない国だということが感じられます。特に本国に思い入れがないのであれば、日本で生活するうえでは日本国籍を取得したほうが困ることは少なくなるかと思われます。
外国籍でも公務員になれますか?
帰化申請を依頼される方の中にはお子様の将来を考えて帰化をしたいとおっしゃられる方も少なくありません。帰化をしないと将来不利になることがあるのでしょうか?
今回は公務員と国籍についてお話いたします。
まず公務員には国家公務員と地方公務員がありますが、国家公務員については日本国籍でない方はなれません。これは国家公務員の任免や勤労条件等について定める人事院規則に「日本国籍を有しない者」は受験資格がないと規定されています。(人事院規則8-18第9条)
したがって、警察官や自衛官などは受験自体出来ないということです。
国家公務員は国の権力を行使したり国の運営を行ったりするため、外国人に任せるわけにはいかないというのが理由です。外国人に国の重要な仕事を任せられないのは理解できても特別永住者の方は「ずっと日本に住んでいるのに」と納得できない事かと思います。
次に地方公務員については各自治体によって判断が異なるようですが外国籍でも受験は可能です。実際、令和2年度の京都市職員採用試験の受験資格を確認すると「国籍は問わない」とあります。 ただし、在留資格が「永住者に限る」との規定もありますので各自治体や試験によって確認が必要です。
しかし、帰化をして日本国籍を取得すれば過去に外国籍であっても国家公務員になることも可能です。
まとめ
このように国籍は就職にも影響します。もし、お子様やご自身で公務員を目指しておられる方がいらっしゃいましたら帰化を考えてみてはいかがでしょうか?
次回は外国籍の地方公務員は管理職になれないのかについてお話いたします。
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